TRAGA

PROJECT STORY「TRAGA」

TRAGA

プロジェクトの始まりは2012年頃。当時、インドネシアのマーケットにおいて、小回りの利く小型トラックへの需要が拡大していたが、既にシェア8割を占める日本のマーケットリーダーが市場を独占していた。ISUZUが新たなトラックを投入する意義は、より現地のニーズに応え、“使える”車種を生み出すことだった。徹底的な市場調査から始まった、インドネシア市場向け小型トラック開発プロジェクトに携わった社員が当時を振り返りながら、開発の道のりを紹介する。

MEMBER

  • 小畑 拓真

    田窪 良行Yoshiyuki Takubo

    海外営業第五部 アセアン営業第二G
    2006年入社

    入社以来、一貫して海外営業を担当。ベトナム市場を担当した後、インドネシア駐在中に本プロジェクトに参加。駐在経験を活かして市場調査を担い、日本帰任後はインドネシアと開発部門の橋渡し役として量産開始までプロジェクト管理を担う。

  • 田窪 良行

    小畑 拓真Takuma Obata

    事業推進部 コーポレート戦略G
    2007年入社

    小型の商品企画・設計として、国内向け小型トラック「エルフ」の開発を担当。その後、新興国向け軽量トラックの開発担当となり本プロジェクトに商品企画としてスタート時から参加。現在は企画・財務部門でアライアンス関連の業務を担う。

  • 津口 星也

    津口 星也Seiya Tsuguchi

    車両審査実験第一部 統合実験課
    2008年入社

    車両実験部にて国内外のCV/LCVの開発を経験。2012年からグローバル車両審査実験部へ異動し、新興国向けの車両開発を担当。インドネシア市場においてもニーズの高い“耐久性”に応えるため、シャシ部品(FRAME・足回り・排気系等)の強度耐久性の実験評価と開発を担う。

競合がシェアを握るインドネシアマーケットで
ISUZUの真価を発揮する

田窪「TRAGA」のプロジェクトは、ちょうど私がインドネシアに駐在していた2012年頃からスタートしたプロジェクトです。当時、インドネシアで営業活動する中で、小回りの利くトラックが欲しいという声をたくさん聞いていました。商品企画部でも新興国向けに耐久性のある軽量トラックを出せば、シェアを獲得できるのではという声もあったそうですね。

小畑当時のISUZUのラインナップとして、ピックアップトラックと小型トラック「エルフ」の中間セグメントの車種がありませんでした。インドネシアでは、そのセグメントを日本メーカー1社がシェアを独占している状態でした。当時から、インドネシアの需要は右肩上がりで拡大しており、ISUZUの持っている良さを活かし、そのセグメントに新な車種を投入出来れば、1社独占を崩せるのではないかと考えました。さらに、将来的にはインドネシアを起点に、世界展開も見据えたプロジェクトとして立ち上げました。

田窪小型トラック「エルフ」の1つ下、初めて仕事や事業を始める人でも買いやすい“エントリーカー”として提供すれば、そこを起点に上位モデルにつながっていくのではという思惑もありましたね。

津口私が担当している車両実験は生産前段階の工程のため、プロジェクトに参加したのは構想が固まった後だったのですが、市場調査はどのように行ったんですか?

田窪トラックが多く集まる野菜市場や米市場、織物問屋や雑貨が多く集まる場所に足を運びました。実際に積み下ろしする姿を観察し、どんな荷を何トン運んでいるかといったデータを集めました。

小畑現地では、シェアを独占しているメーカーの車両に合わせて、市場のプラットホームが出来上がっている状態だったんです。荷台の高さに合わせて積み下ろし場所の高さが決まっていたりする中で、ISUZUならもっと低くできるからといって変えてしまうと、実際の作業シーンでミスマッチが起こります。マーケティングという意味での市場調査と並行して、いかに現地の“足”としてフィットできるかにも重点を置いて調査しました。

津口あとは既にシェアを独占している競合とどう差別化を図るかですよね。プロジェクト参加当初、私は小畑さんたちから依頼を受け、競合の車両を購入し、徹底的に調べる役割でした。

小畑エンジン性能(燃費)は競合車よりも明らかに勝っていましたよね(笑)。競合車よりも燃費性能が良くて、低価格で、積載量が担保されている商品ができれば、必ず評価されるだろうという方針になりましたね。

田窪そこがISUZUの強みでもありますから。実際につくるとなって、大変だったんですけどね(笑)。

TRAGA

現地ユーザーに届けるために
本当に必要なものを見極める

小畑実際の開発段階では、コストを下げる事にかなり時間をかけましたよね。

津口企画・設計段階から原材料や製造工程など、徹底して見直して削減を図る原価企画ですね。私たちはCR(コストリダクション)とも言っていますが。

小畑“手に入れられる価格”が大きなテーマでもありましたからね。

田窪現地で調達する部品を増やしたことで、これまで日本国内で完結していたことが、現地法人を介してコントロールしなければならず、時間もかかりましたね。

小畑今まで海外のプロジェクトで、日本にある車を海外で製造する、一部を現地の調達に変えるというのはあったんです。「TRAGA」は日本に基盤がなく、インドネシアでゼロからつくるプロジェクトで、初めての経験でしたからね。電話会議だけだと意思疎通が難しい場面もあり、開発や購買の方と何度も現地に足を運びました。

津口今まで経験したプロジェクトと進め方が全然違ったのを覚えています。日本側の考えだけでは決められず、現地とディスカッションをして決めなければならないことがあったので苦労しました。

小畑評価方法や評価基準も、現地に合う形に見直しましたよね。

津口今までの自分たちの基準の中でつくってしまうと、どうしても現地で受け入れられないような値段になってしまいますからね。新しい商品をつくる場合は、競合を比較対象に据えて基準を新たにつくり直します。そういう面でも時間がかかりました。

小畑どこを削るかも悩みましたね。普通の開発であれば“壊れない”を重要視する部位でも、市場調査をすると壊れてもすぐ直せれば受け入れられる風土があったんです。

田窪インドネシアと日本の違いは、こちらが想像していた以上に積んだり、悪路を走るんですよね(笑)。ユーザー自身も激しい使い方をしていると分かっているので、求めるものも“絶対壊れない”ではなく、壊れた時にすぐ直る、部品が手に入りやすいということだったんです。

小畑もちろん、絶対に壊れてはいけない部分もあります。ですが100%をめざして高い製品になり、結果現地のユーザーに届かなければ本末転倒ですから。現地での使われ方や競合車の実力等を調査し、検討を重ねました。

津口あとは、ユーザーが改造することが多いので、改造できるようにもしましたね(笑)。だいぶ、常識を現地仕様にチューニングしたイメージです。

TRAGA

インドネシアでの経験を糧に
世界中のマーケットへ

小畑プロジェクトスタート時には、2015年あたりのリリースを目指していましたが、結果的には2018年になってしまいました。

田窪現地会社との間でどうコストを抑えながら採算を取るのか合意するのに時間がかかってしまいましたからね。

小畑さまざまな企画が立ち上がりますが、予算面やタイミングで成就しないプロジェクトはたくさんあります。その中で、現地法人と金額や事業計画で合意できたときに、「あぁ、このプロジェクトは実現するんだ」とやっと思えました。津口さんはどのタイミングで感じましたか?

津口プロトタイプが完成して、見栄えもいいし、これは成功するなと思いました。けれどそこからが長くて…。やっとモニター車が数百台完成し、現地のユーザーが実際に走らせている動画を見た時に、「あぁ、カッコいいな」って客観的に思えたんですよ。開発者としてではなく、一人のユーザーとして「いい車だな」と思えた瞬間、現地でも受け入れられると確信しました。

田窪初年度の販売目標3,000台を達成してほっとしましたよね(笑)。過去に失敗もありましたが、コンセプトを明確にすることでうまく差別化できたのではないでしょうか。

小畑リリース後、1年は特別体制でサービスを強化し、壊れやすい部品の特定やディーラーへの配備を進めました。

津口日本と違い、やはり想定外のことも起こりますから。ただ、このトライ&エラーが次の国に進出する財産になると思っています。

田窪インドネシアから完成車を輸出する以外にもインドネシア等から部品を供給して第三国で組み立てる可能性についても検討を始めたところです。実際、他の国からもいくつか要望があがっていますし。

津口私としては、「色々な国に進出しちゃえばいいじゃん!」という勢いでやりたのですが(笑)。営業担当には色々な方針もありますし、各国でニーズもバラバラですからね。

田窪見積り出すのも大変ですよ(笑)。
でも、新しい商品を提供すると、現地ディーラーの方やユーザーがものすごい喜んでくれて。モデルチェンジとは比較にならないほど反響をいただいて、単純に嬉しいですよね。だからTRAGAを他国にもどんどん出していきたいという思いは強いです。

小畑ゼロから新しいモデルを開発して量産化まで携わる機会はめったにないですからね。非常に貴重な体験だったと思います。インドネシアでの経験を活かして別の国へというのももちろん魅力的ですが、できればこの経験を、他の社員にも体験して欲しいと思っているんです。だから自分は全く違う分野に挑戦するということも視野に入れています。

津口小畑さんのおっしゃるとおり、本当に貴重な機会でしたし、自分の子供に自慢ができるプロジェクトになったんじゃないかと思います。今回の経験で、自分たちのものづくりを実現するには、2、3歩先まで読んで、視野を広くもって考える必要があるんだと痛感しました。

田窪それぞれ経験を積んで、いつかまたパワーアップして新たな国で新たなモデル開発にチャレンジする日が、楽しみですね。

国が変わると、商用車のニーズ、生活に根ざした使われ方が大きく変わることを身を持って経験した3人。自身の常識の範疇ではなく、現地の人々の生活、文化への妥協のないリサーチとISUZUの技術を掛け合わせることで、ISUZUの新たな“顔”が誕生した。今後、インドネシアを起点としながら、TRAGAは世界中で活躍していくだろう。

TRAGA
プロジェクト紹介Project Story
  • TORAGA

    「TRAGA」

  • MIMAMORI

    「MIMAMORI」

pagetop