PROJECT 02

ELFmio開発プロジェクト

普通免許で運転できるトラック、「ELFmio(エルフミオ)」の開発プロジェクトは、ISUZUの若手社員2名が、それぞれ開発と販売という異なる側面から推進しました。この記事では、彼らのインタビューから得られた、社会課題への挑戦と自身の成長の軌跡をたどります。

ELFmio開発プロジェクト
MEMBER
S.T
国内事業推進部
企画グループ

新車リーフレットやデモカー用グッズの企画など、営業・販促活動を幅広く支援する業務を担当。(プロジェクト当時は営業企画グループに所属。)

S.K
小型・中型商品企画・設計部
CV車両設計第六グループ※

プロジェクトを俯瞰し、日程管理や予算管理、車両全体のレイアウト設計や開発全体の取りまとめを担う。
※現CV商品企画第一部 商品企画第一グループ

STORY 01これまでの歴史にない、
新たな挑戦

日本の物流を支える小型トラック「ELFシリーズ」に関する一大プロジェクトが、2018年に動き出した。テーマは、実に30年ぶりとなるフルモデルチェンジ。キャブの骨格や内外装のデザインを一新し、機動性、先進安全装備を拡充させることで、商品力の大幅な向上と車型のラインナップ拡充を目指すプロジェクトであり、特に大きな挑戦の一つが「ELFmio」の開発だった。普通免許で運転できるトラックとして、人手不足が課題となっている物流業界へ、ドライバーの裾野を広げるという一石を投じるものだ。
このプロジェクトに参画した当時新卒入社4年目のS.Kは、量産開始までの日程や予算の管理、そして車両全体のレイアウト設計など、プロジェクト全体のまとめ役を担った。「配属された時点では、すでにプロジェクトは進行中でしたが、企画内容の見直しなど解決すべき課題が山積みでした。正直、不安にはなりましたが、やるしかないと考えて一心不乱に取り組みました」とS.Kは話す。ELFシリーズのすべてがフルモデルチェンジとなるため、ELFmioの開発は限られた少数精鋭で行われることになっていたのだ。
もう1人は、2023年に新卒入社したS.T。入社半年後、営業企画グループに異動となり、このプロジェクトに参加することになった。彼のミッションは、かつての営業スタイルに依存しない、新たな売り方への挑戦だ。「これまでのELFをはじめとしたトラックの販売は、営業スタッフによるお客様オフィスや事業所への訪問営業が主流でした」と、S.Tは話す。しかし、ELFmioは、ISUZUが扱ってこなかった新しい商材であり、主に乗用車メーカーが得意とするサイズのトラックだ。そのため、今までとは異なる新しいお客様との接点をつくる必要があった。そこで、S.Tが立ち上げを任されたのは、「ELFmioストア」というオンラインストアだった。ISUZUにとってはじめての試みに対して、「トラックなんてそもそもWEBで売れるのか、という不安感や疑問はありました」とS.Tは当時を振り返る。
プロジェクトの陣頭指揮を執るS.Kと、未知の市場を開拓するべく新たな販売チャネルをゼロからつくりあげるS.T。異なる立場の二人は、それぞれが困難なミッションを背負い、プロジェクトに挑んでいく。

STORY 02経験が通用しないから、
やりがいになる

「一番苦労したのは、燃費性能のつくり込みです」とS.Kは語る。トラックは、お客様にとってビジネスのためのツールであり、燃費は利益に直結するため重要視される性能の一つだ。開発当初に掲げた燃費の目標に対して、机上での計算では目処は立てられたものの、いざ試作車両を走らせてみると、目標に届かないことが判明する。その原因の一つに、これまでISUZUが手がけてきた3.5トン超のトラックとは異なり、ELFmio は3.5トン以下のカテゴリだったことがある。カテゴリが変わることで試験方法が全く異なるため、今まで培ってきたノウハウが通用しなかったのだ。だが、つくるからにはいいものにしたい。この難題にS.Kは粘り強く立ち向かう。解決のために関係部署と連日議論を重ね、車両の走行抵抗の低減やパワートレインのチューニングをするなど、多様な対策を検討した。「半年以上かけてトライ&エラーを繰り返した結果、最終的には燃費を5%以上も向上させることができました」と、S.Kは諦めなかったからこそできる笑顔を見せてくれた。
また、S.Tは「発売日程が決まっている中で、サイトの構造やコンテンツ、WEB広告・プロモーション戦略やリース形態まで、とても幅広い領域を限られた時間で進める必要がありました」と言う。しかし、紙のカタログとは異なり、WEBは公開後も修正・改善が可能であると考えた。そこで、最初から完璧を目指すのではなく、スピード感を重視して一旦つくりあげ、ユーザーの反応を見ながら改善を重ねていくことを意識したという。この考え方が、限られた時間内でのプロジェクト成功につながった。「はじめての取り組みだったので、何が正解なのかが分からないんですよね。でも、それが『新しい市場に飛び込んでいく』という実感につながり、非常にやりがいを感じました」とS.Tは言う。視点を変え、やり方を変えていく。これも新しいことに立ち向かうためには、必要不可欠な気概だ。

STORY 03若手の挑戦が
社会を変えていく

さまざまな苦難があった当プロジェクトだが、その分関わった二人には大きな感動があったという。S.Kが話すのは、ジャパンモビリティショーへの参画だ。「まだ、量産に至るまでの課題が残ってはいましたが、自分が担当する車両を晴れ舞台に出展したことで、絶対にこのプロジェクトを完遂させなければと胸が熱くなりました」と言う。ジャパンモビリティショーとは、世界を先駆ける先進的な技術が軒を連ねる展示会。そこに「普通免許で運転できるトラック」と銘打って出展したことは、日本の物流業界が抱える「ドライバー不足」という喫緊の課題への、業界のリーディングカンパニーであるISUZUからの答えなのだ。
一方でS.Tは、「乗用車ディーラーでトラックを購入していたお客様に、新たな選択肢を提供することができました。ISUZU、そしてELFmioというブランドが、より身近な存在として認知されるようになったことは、大きな価値だったと感じています」と話す。また、ELFmioストアを通じて購入したお客様にインタビューした時のことも印象的だったという。「そのお客様は多忙な方で、ディーラーに足を運ぶ時間が取れないとおっしゃっていました。ですが、ELFmioストアができたことで、忙しい自分でもじっくりとトラックを選ぶことができた、と言ってくださったんです」と、S.Tは振り返る。今までつながりのなかったお客様のビジネスの一助となれたことを実感し、自身が目指していた新しいISUZUの姿が、お客様のニーズに合致したことに喜びを見せた。
普通免許で運転できる唯一の小型ディーゼルトラックは、これから街中で目にする機会が増えるはずだ。その影には、若手でありながらプロジェクトの立ち上げという大きな責任を任され、やり遂げたS.KとS.Tに加え、多様なステークホルダーの想いがある。二人は今回のプロジェクトを通して得られた達成感を胸に、これからもさまざまな人と一緒に新しいプロジェクトに挑戦し、ISUZUの価値をさらに高めていく。※取材当時の情報です。